ちいさな路地

 
私の住んでいる地域は、昔ながらのちいさな路地がたくさんあって、そういった路地がこの街の雰囲気を作っている感じがして、私がこの街を気に入っている理由のひとつ。

たいてい、そういう路地は幅が1-2メートルしかなく、人がすれ違うのもやっと、という感じ。
路地沿いにはそこに住んでいる人たちの持ち物なのでしょう、植木鉢なんかが並べられていて、知らない路地を歩いていると、人の家の敷地を歩いているような気分になります。

その先が行き止まりになるのかどうかもわからないような路地を思いつくままに歩いて、時にはああ、、この道ってここに通じているんだ、と発見したりするのが、引っ越したばかりの時にはひとつのちいさな楽しみでした。

そんな路地のひとつが最近姿を消しました。
その路地は、我が家から駅に歩いていくときによく使っていた、近道でした。

おおきな国道から、これって人の家の入口なんじゃない?と思ってしまうようなところを折れ曲がり、古い魚屋さんの軒下をくぐり抜けながら進むと、意外や意外、ずーっとその路地はのびていき、いつの間にか我が家から駅までの正規の道の途中に出るのです。

正規の道だと車通りの多い道の脇を歩かなくてはならないので、私はいつもこの、秘密の道のような路地を使わせてもらっていました。
そう、使わせてもらう、という言葉がぴったり来るような、路地沿いの家々の生活の中にお邪魔するような感覚が好きでした。

そして最近、工事の予定、という看板が出たと思ったら、数週間後に工事が始まり、路地は通ることができなくなってしまいました。
路地は通行止め、そして路地沿いの古びた家々は壊されていきます。
想像するにこの一帯は同じ地主さんの土地だったのでしょう、
地域を一括して再開発するようです。
少ししたら、マンションか何かが立ち並ぶのかな。
路地はたぶんなくなるのでしょう。

私の秘密の近道(といってもいろんな人がこの道を日常的に使っていて、朝なんかかなりの人通りなんですけどね)がひとつなくなり、なんだか寂しい。

我が家の居間からもそんな路地が見えるので、ひまな時はいつも路地を行く人、ネコなんかを眺めているのですが、この路地もいつかなくなってしまうんでしょうか。
 
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です